①親子の会話を生み出す「共通体験」

そのような現代の状況の中で、親子で自然体験を共有することには大きな意味があります。

親子で同じ自然体験をすることで、「あのとき楽しかったね」「あの虫見つけたね」「あの川冷たかったね」など、共通の体験をもとにした会話が生まれます。

共通の体験があるからこそ、その体験を思い出しながら会話が生まれ、親子のコミュニケーションのきっかけになります。

自然体験はその場で終わるものではなく、体験後の家庭での会話の中でも親子の関係を深めていく役割を持っていると考えられます。

②自然体験がつくる「心に余裕のある会話」

自然体験を話題にした会話には、テレビゲームや動画の話題とは異なる意味があります。

ゲームや動画は刺激が強く、興奮した状態のままコミュニケーションが行われることもあります。

一方、自然体験は心を落ち着かせ、気持ちを穏やかにする力があります。

自然の中で「気持ちよかった」「楽しかった」「すごかった」と感じた体験は、心が整った状態で共有されます。

そのような状態で交わされる親子の会話は、互いの気持ちにゆとりを生み、ストレスを和らげ、健やかなコミュニケーションにつながると考えられます。

親も子どもも、自然の中での体験を通して気持ちがリフレッシュされ、その体験を語り合うことで心の余裕を持った関係が育まれていくのではないでしょうか。

③親子で参加する自然体験の大きな意義

さらに、子どもだけが参加するキャンプや自然体験活動とは異なり、親子で参加する自然体験にはもう一つ大きな意義があります。

それは、親が子どもの成長する姿を直接見ることができるという点です。自然は思い通りにならない環境です。

その中で子どもは工夫したり、粘り強く取り組んだりします。

普段の生活の中では見られない真剣な表情や頑張る姿を、親がすぐそばで見ることができます。

「こんなことができるんだ」「こんなに頑張れるんだ」という子どもの姿を親が実感し、それを言葉にして褒めることは、子どもの自信や自己肯定感につながります。

自然体験が引き出す「本来の子どもの姿」

自然体験の中で見せる子どもの生き生きとした表情は、ゲームをしているときの楽しさとは少し違います。

それは、人間が本来持っている自然への喜びや好奇心、体を使って世界と関わる楽しさから生まれる表情です。

そうした姿を親が見守ることができることこそ、親子で自然体験に参加する大きな価値だと言えるでしょう。

おわりに

自然体験は、子どもの生きる力を育てるだけではありません。親子が同じ体験を共有し、会話を生み出し、心を整え、そして子どもの成長を実感する機会にもなります。

忙しい時代だからこそ、親子で自然の中に身を置く時間を持つことが、これからますます大切になっていくのではないでしょうか。

参考文献

「三河地域の親子を対象にした自然体験の場作りの可能性について -親子自然体験ツアーの試みを通して-」宇都宮 森和